
さっき家に返って来て、真っ暗な中冷蔵庫を開けたら冷蔵庫の明かりが優しくてちょっとうっとりした。優しい気持ちになった。まだ幼い頃、両親が離婚する前、寝る時は当然家中暗くして寝ていた。ただ、幼い自分にとって「静寂」と「暗闇」というのは脅威だった。怖くてトイレに行くのにはそれなりの勇気を必要としたし、両親が無防備に寝ている事に妙な不安もあった。「自分がなんとかしなければ」みたいな。想像力が豊かだった自分は、家にゾンビがいるんじゃないかとか、オバケが出るんじゃないかとか、暗い所にいるとそれは必ず想像し、思った。
離婚をすると、母は基本的に夜は仕事で家にいなかった。弟と2人で留守番をするのだが、お母さんがいないのをいいことに、夜中までゲームして、お互い怖いのは嫌なのでテレビも電気もつけた状態で寝ていた。自分は弟に先に寝られるとさみしくて仕方がなかったので「テレビから人の声がして、人の姿が見える」というのは本当に安心したしありがたかった。
少し自立心を持った高校生くらいになると、僕はアルバイトを始めるようになった。その頃お母さんは仕事をしなくなってずっと家にいた。他にしていたこともあるが他人に公表するような事ではない。アルバイトを始めると、朝学校に行って、アルバイトを終えてからだいたい23時頃帰ってくるようになる。そのリズムからか「暗い部屋で寝たい」と望むようになる。しかしお母さんが起きているので、暗い部屋で寝るのは望むだけだった。
今ではその環境も手に入れる事ができた。24時間、基本的に部屋の電気を付けない生活をしている。誰かが遊びに来たり、漫画読んでたり、探し物をしていたり、何か作業さえしていなければ僕の部屋は基本的に真っ暗である。夕方に太陽がどんどん落ちる瞬間なんて、最高だと思う。
暗い部屋が好きだ。ただ、その空間で誰かと居るのは難しいので、これが普通になる世の中になれと願わんばかりである。
